なんでここ空欄なん?

2023年12月28日

冨高由喜(フリーアナウンサー、個人サポーター)

千葉から母の実家がある兵庫に引っ越した小学1年生の終わり、
やや乱暴に聞こえる関西弁に戸惑うと共に、その指摘にドキッとしました。
私が小中学生だった頃は、個人情報という言葉も聞いたことがなく、転校生がやってきて人数が増える度にクラス全員の住所、氏名、電話番号、そして両親の名前が書かれた最新の連絡網(住所録)が配られていました。両親の離婚で母が出戻った訳なので、父親の欄はぽっかり空いています。それでも母、祖母、そして兄妹3人、毎日楽しく暮らしていて、みんなで旅行に行ったり、美味しいものを食べたり、なんの不自由もなかったけれど、それからも時々クラスメイトにそのことを聞かれて、その度に胸がギュッと締め付けられ、どう答えていいかわからなくなるのです。
毎年配られるその連絡網もなんだかすごく嫌な気分。
中学生になると、もうみんな事情が分かってきて、そんな言葉を投げつけるクラスメイトはいなくなったけれど、ある日、塾の数学の授業で何も知らない先生が言いました。
「冨高、お前の家は何人家族だ?5人?そうか。お父さんとお母さんと、兄弟は3人?全部で5人だな。1人に対して…」
なんの応用問題だったかも覚えていませんが、小学校から一緒で塾も一緒の女子が後ろでクスクス笑っているのが聞こえました。
「そこ笑うところと違う!我が家は父なしで祖母が入って5人です!」今ならそう言えるかもしれませんが、その時は何にも言えず、先生もなぜ笑っているか分からずそのまま素通り。ああ、おばあちゃんが消えてしまったし、空欄が勝手に埋まってしまった…その時の情景が今でも目に焼き付いています。
その生徒はなんの気なく間違っている先生に対して笑ったのかも知れません。私もちょっと過敏すぎたのかも…。でも今でもやっぱり思い出してしまうのです。新聞などで時々目にする「ひとり親家庭」「シングルマザー」「シングルファーザー」。登場する親子はちゃんと幸せに過ごしているかな?心無い言葉をかけられたりしてないよね…。ひとり親でもふたり親でも、なんならさんにん親でも、現在は多様化が進み、色んな家族の在り方が普通になってきています。もうちょっと想像力を働かせて、お友達のことを思いやってみませんか?そして大人にも、まずはその常識を疑ってみて、と言いたいです。
そしてもし今、周囲からの心無い言葉や行動で傷ついているお友達がいたら、その思い、しまわなくていいんだよ。誰かにぶちまけたら少し変わるかも。当時の私にも言ってあげたかったな。