辛く悲しみの中にいるあなたに

2023年1月20日

伊勢みずほ
(フリーアナウンサー・個人サポーター)

 先日、40代の私は70代の母とこんな昔話をしました。
 「ねぇママ、私がクラスメイトから無視されてたけど、誰にも言えなかった時のこと覚えてる?でも、一人の友達が親に告げ口してくれたおかげで、ママの耳に届いたんだよね。あの時、学校まで行って助けてくれてありがとう。」
 あれから何十年も経ち36歳になった時、私は乳がんになりました。その現実を受け止めるのが辛く悲しかったのに、やっぱり私は人に言えず病気になったことを隠していました。
 子供のころの私も、大人になった私も、SOSを出すことが苦手でした。なぜ人は辛いことを話しにくいのでしょう。

 心配をかけたくない、情けない、口にすることでもっと大事になってしまうかもしれない、こんなに辛い気持ちは分かってもらえず、そのことによってさらに傷つくのが怖い。いろんな理由があると思います。
 でも、その全てを天秤にかけてでも、「話すこと」を私は選びたいと今は思えるようになりました。その理由は簡単です。「話すこと」こそが、胸の内に溜まった苦しみを放出してくれるのだとわかったからです。
 人生はどうしても一人では乗り越えられない出来事が起きます。そんなとき思い切って言葉にできる自分でありたい。また言葉にしてくれる人の良き聴き手でもありたい。
 話すだけでいい、聴くだけでいい、解決しなくてもとりあえずはいい。

 家族や友人、多くの方に助けていただいたおかげで、辛かったあの経験も今の私にとっては大切な宝物になりました。
 今は辛く悲しみの中にいる人も、忘れないでください。あなたを笑顔にしたいと思っている人たちが、実はたくさんいるということを。